本県の食文化は、長い歴史や諸外国との交流の中で、人々の生活に根付いて育まれた独特なものである。
歴史をたどると、琉球王朝時代に中国の冊封使や薩摩の在番奉行等を饗応するための料理が生まれ、調理技術や作法等を洗練させて宮廷料理として確立した。それが上流階級に伝わり、明治以降は一般家庭にも広がりさらに発展をとげた。
一方、庶民料理においては、亜熱帯・島嶼の厳しい自然環境のもとで、手に入る材料を用い、知恵を絞って独特の料理を創り出した。
それは中国より伝わる医食同源の理念にかなったものであり、医学的な治療も日常的な食事も、ともに人間の生命を養い健康を守るものでその源は同じとする考え方であり、今日でも「クスイムン」「ヌチグスイ」として、生活に根付いている。
琉球料理はその双方を源流として現在に受け継がれてきた。
沖縄には、豊作祈願や祖先崇拝にまつわる儀式、中国から日本に伝わった祭り等、多彩な年中行事が多く行われている。
これらの年中行事では、親族や地域住民が集まり、先人達の知恵と工夫が込められた行事料理を囲み、語らうことで人と人、地域とを繋ぎ、社会的な絆を再確認する役割を果たしてきた。
しかし、近年食生活の欧米化などを背景として、ライフスタイルや価値観の多様化などに伴い、私たちの食を取り巻く環境は大きく変化しており、食文化を支える人材の高齢化や年中行事の簡略化等による行事食の衰退、若い世代を中心とした伝統料理離れが進み、伝統的な食文化が失われつつある。
このため、県民が伝統的な食文化の価値を再認識できる環境を整え、一体となって受け継いでいく気運の醸成を図ることが急務となっている。
「沖縄の伝統的な食文化」の定義
沖縄の伝統的な食文化とは
琉球料理という沖縄独自の料理文化に基盤をおき、
食材や調理法、風俗習慣などの様々な要素を包含した生活文化である。
その底流には、自然や気候風土の尊重、家族。 親族や地域とのつながりを
大切にする精神、日中両国はじめ各国との交流による影響などがある。
琉球料理とは
沖縄で発展・継承されてきた伝統的な料理である。
琉球王朝時代に中国の冊封使や薩摩の在番奉行等を饗応する為の料理が生まれ、
調理技術や作法等を洗練させて宮廷料理として確立した。
それが上流階級に伝わり、明治以降は一般家庭にも広がってさらに発展した。
また、亜熱帯・島嶼の自然環境のもとで育まれてきた庶民料理があり、
その双方を源流として現在に受け継がれている。
※上記で示した定義は本事業での定義となります。
伝統的な沖縄の食文化9つの要素
- 1.食材
- 各地域に根ざした食材-野菜、魚介や海藻、 豆腐、豚肉等-を多く用いるとともに、外来の昆布やスンシー(シナチク)等を巧みに取り入れ定着させている。本土のように食肉禁忌の影響が少なく、肉食文化が発達しており、特に豚肉食習が根強い。
- 2.調理法
- 基本的に加熱調理で、生食は少ない。油脂を用いた汁物、煮物、炒め物、揚げ物が多い。豚肉は、茹でてアクや余分な脂肪を取り除き、下処理をしてから調理する。茹で汁はだしとして用いるなど、食材を無駄なく活用するのも特徴である。
- 3.味わい(だし)
- 豚のだし(肉・骨)とかつおだしをベースに、肉、 魚介、昆布、野菜、豚脂などを複合的に用いることで生まれる深い旨みやコクが料理の味の基調をなす。
- 4.栄養
- 豚肉と昆布、島野菜と島豆腐の取り合わせに代表されるように、食材の相性を工夫し、栄養的にもバランスがよい。 健康によいとされる自然の素材や煎じ物(シンジムン)が多く用いられ、「医食同源」の考え方が根づいている。
- 5.菓子
- 琉球王国以来の伝統を受け継ぐ菓子職人によって作られ、50種類以上の多様さを持ち、それぞれ儀式や行事の際に用いられてきた。鶏卵糕(チイルンコウ)や光餅 (クンペン)など中国の影響が色濃く残る菓子が多いが、日本系や南蛮系の菓子もある。
- 6.酒
- 琉球王国時代、泡盛は江戸幕府への献上品や、また冊封使の饗応にも供された。現在でも、 冠婚葬祭や伝統祭祀、行事等の際にも供され、長く寝かせ熟成させた古酒として飲用されることも多い。
- 7.茶
- 沖縄でよく飲まれているのは、中国から伝わった清明茶や茉莉の花の香をつけたさんぴん茶である。
ブクブク一茶は、煎米湯とさんぴん茶、番茶の茶湯を合わせ、大きな木鉢と茶筅(ちゃせん)で泡立てた泡を飲む飲み物。沖縄特有のお茶で那覇で広まった。
- 8.食器
- 琉球漆器、陶器、磁器等を用いて料理を盛り付ける。螺鈿や堆錦のきらびやかな文様のある東道盆は、接客用の琉球料理を盛る器として王国時代から用いられ、料理とともに琉球の美を表現している。
- 9.風俗習慣
- 親族や地域住民が集まる行事や伝統祭祀の際に独特の料理がふるまわれるなど、料理は社会的な絆を再確認する媒体である。